2017.07.06 22:00願うのを期待して 洞窟の中にいた竜は空から竹が落ちたことに気が付いた。転移魔法で手元に持ってきた。 竹は竜の手の平に乗った。人よりも大きいが、竜にとっては小枝のようなものだ。竹には数えきれないほどの短冊が括り付けられており、短冊には何か願いごとが書かれているようだ。 今この竹が振って来たのかは知っている。時折空や土の中、いたるところに出てくるどこかの世界にある文化の物。竜も何度か見たことがある。これは七夕と言う日に願いを書いた紙を吊るして祈願する行事に必要なものだ。 界面干渉学の学者に渡したなら喜ぶだろう。彼等がこちらに面会してくるか待ってみたいが、“持ってくる”ことは出来ても“来てもらう”ことは出来ない。 短冊に書かれた紙も見ればなんの目的なのかはいずれ理解するであ...
2017.07.06 22:00願うなら 百貨店の広場に大きな竹が一本立てられている。枝には沢山の短冊が掛けられている。短冊には様々な願いが書かれている。 見事な竹と、多種多様な願いに興味を引かれて伊佐は竹をしばらく見ていた。「何を見ているんだい?」千条が買い物を済ませてやってきた。「ああ、竹さ。短冊に書かれていた願い事を見ている」千条も一瞥する。「書いているのはおよそ十歳未満が68パーセント、十代が19パーセント、2パーセントは二十代から五十代、11パーセントが60代以降。子どもが多いね」「以外と大人も書いているんだな」「大人も書いているのは恐らく子供連れだよ。ほら」千条は短冊を書く机に視線を向ける。 3歳ほどの子供とその親らしき大人が笑顔で書いている。文字があまり書けない子に教えつつ、自...