願うのを期待して

 洞窟の中にいた竜は空から竹が落ちたことに気が付いた。転移魔法で手元に持ってきた。

 竹は竜の手の平に乗った。人よりも大きいが、竜にとっては小枝のようなものだ。竹には数えきれないほどの短冊が括り付けられており、短冊には何か願いごとが書かれているようだ。

 今この竹が振って来たのかは知っている。時折空や土の中、いたるところに出てくるどこかの世界にある文化の物。竜も何度か見たことがある。これは七夕と言う日に願いを書いた紙を吊るして祈願する行事に必要なものだ。

 界面干渉学の学者に渡したなら喜ぶだろう。彼等がこちらに面会してくるか待ってみたいが、“持ってくる”ことは出来ても“来てもらう”ことは出来ない。

 短冊に書かれた紙も見ればなんの目的なのかはいずれ理解するであろう。

 竜は竹に再び転移呪文を掛ける。移動先はム・マッケミートにいる奇妙な学者へ。

 彼らが何を願うのか期待をして、竜は眠りについた。

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