“例の顔”

ううう、漫画の本を落したので、代わりのものをイベントで頒布します_(:3」∠)_

最後に知らん人がいます。やや注意。


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 蟬ヶ沢は満足そうに頷いて資料をまとめる。

 新店舗の装飾の依頼が入り、予定通りに事が進みそうなのだ。

 連れて行くスタッフを呼び、移動しようと席を立つと、鞄に入った携帯電話が振動した。

 隣にいたスタッフが察して自分の携帯も確認するが、何も来ていないようだ。

「ちょっと移動先に遅れるって連絡入れておいて、予定通りには来るけどちょっと寄るところが出来ちゃったわ」

不機嫌というには無表情すぎる蟬ヶ沢を見て、スタッフはため息を付いた。

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 スクイーズは浮かない顔をして交番近くのパーキングエリアに車を停めた。

 端末からの情報によると交番で潜入している探索型合成人間がいるからそいつに書類を渡せとのこと。渡す相手はスネークアイ。この名は以前から知っている。変身型の合成人間にも関わらず、生存を許されている珍しいタイプだ。他に変身能力で生存していると噂されているのはマンティコアとパールと聞いていたが、元の姿を知る者がいないので仮に生きていても死んでいても確認することができない。

 これからスクイーズが会う相手もマンティコア、パールと同様に元の姿を知らない。知っているのは変身した後の姿だ。現在は男の警察官の姿をしている。彼―と言っても合成人間には性別が事実上ない―は変身する元となる人間を喰らい変身を行うらしい。

 スネークアイは任務そのものは真面目にこなしつつ、情報を洩らしつつ消すチキンレースをしている。スクイーズが任務の任務通達をしたときも平然と情報漏洩している時に居合せて苦い顔をしている。

 あまりにも露骨に顔をしかめるスクイーズにどうせこいつの記憶は消すんだからいいだろうがとスネークアイは言う。

 怪しい噂話を延々と聞かされ続け、精神的に追い詰められた後輩警察官は縋るようにスクイーズを見るが、彼は視線を合わせるが何もしない。

「もういいだろう。このあとの話まで入っては私も困るんだ。こいつは気絶させる」

スクイーズが自身の特殊な肺にチャージをし、脳震盪を起こさせるほどのエネルギーを溜めようとすると、

「待て」

とスネークアイは静止させ、後輩警察官に目を合わせて光線を放つ。スクイーズはすかさず後ろを向いて目を腕で保護し、光が目に入らないようにした。この光が目に入ると数時間の記憶が消されてしまうのだ。いずれ忘れてしまう短時間の記憶とは言え、この数時間の間の記憶を今は消されては困るのだ。

「どうせならお前も目を見てもよかったんだぞ」

「私まで記憶を消されたらこれから知らせる任務のことまで忘れるが?まあいい、追加資料とお前からの定期連絡を聞けとこことだ」

 任務のことまで忘れられちゃ困るなと笑い、スクイーズから書類を受け取る。

「そうだな。最近、引っかかった奴がいたが、それは調べてある。書類に書いてあるからそれを渡してくれ」

見た書類と書いた書類をスクイーズに渡す。

「その身体になってからどのくらいの時間が経過している?」

「そうだな、そう長くはない。だが、まだ続けてもいいだろうな。飽きないおもちゃもある」

凶悪な笑みを浮かべて、机に伏している後輩警察官をみる。

 スクイーズの視線が一層厳しくなったことにスネークアイは気付いていない。

「警察官も悪くない仕事だ。荒事が勝手に入ってくる。夜になれば酔っ払いや反応の度数が高い人間が転がり込む。“こっち”の任務は暇過ぎるほどにな。あんたはどうだ?」

「私は……」

「ごめんください?今大丈夫ですか?」

スクイーズが振り向くと、高校生、あるいは中学生くらいの男子生徒(安能君)が迷子になったのだろうか、恐る恐る入ってきた。

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「はい、なんでしょうか」

さっきとは打って変わって人懐っこそうな笑みを浮かべて来訪者を向かる。

 蟬ヶ沢は軽く会釈をしてすれ違う。

 交番を出ると、後ろから明らか室内の光よりも明るい光が一瞬出ていたが、太陽光の光に負けれ薄くなり、外で歩いていた人間には一切気付くことは無かった。

 蟬ヶ沢はちらっと漏れた光を見て眉間に皺を寄せる。

「私は“こっち”仕事の方が忙しくても好きね」

少しだけほっとした笑みをし、駐車場に待つ相手に向けて手を振った。

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「心底連れてこなくてよかったって顔に書いている」

 助手席で待っていたスタッフは蟬ヶ沢を出迎えると、開口一番に言った。

 新店舗の装飾の仕事で行くと聞かされていたが、途中寄るところがあると言われ駐車場で一人待っていた。 

 理由は聞かなくても分かった。彼にしか聞かされていない任務なのだろう。極力彼の任務には同伴するようにはいわれているが、彼から待てと言われては待つしかない。無理に行こうとすれば気絶させるのだ。

 戻ってきた彼は案の定”例の顔”をしていた。任務から戻ってきた時の彼は表情が一切削れた無表情になることが多い。

「当たり前よ」

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