目が痛い。
そう言って伊佐は目を押さえてしゃがみこんだ。
「どうしたんだい、伊佐。目にゴミでも入ったのかい?」
特に心配そうでもない声音で千条はてきぱきと目の洗浄液を取り出す。
コンタクト装着の者なら見たことのあるペットボトルに似た容器。容器の蓋を覆い被さる形で付属されている洗浄する為のコップ、洗浄液を入れた物と違い、暗い茶色とも黒とも判別の難しい色がついている。市販のでも成分的には伊佐が使用しても問題は無いらしいが、市販のは透明なので、伊佐がコップから見える光に耐えられないのだ。
目の洗浄専用の容器を伊佐に渡すが、必要ないと手で断られた。しかし伊佐の手に無理矢理置いた。
「伊佐、分かっているだろうが、君の管理も僕の仕事だよ。失明したらどうするんだ。ペイパーカットも追えなくなるよ」
心配と言うには過剰な言い回しに伊佐は苦笑いした。
「おおげさだ。」
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