その人形は奇抜な姿をしていた。けばけばしい彩色をしていて、一目見たら忘れられなさそうな見た目をしている。
ひょひょひょひょ!やあこんにちは。吾輩は陽気なマスコット、その名もハズレ君。先程の説明文で分かるが、吾輩は人形だ。今ちょうどいいところがあって、密かに実況をしている所だ。何を実況しているかって?それは、吾輩のご主人と、その吾輩のご主人のご主人の対面さ。
まあ、先に吾輩のご主人の話をしよう。吾輩のご主人は、“でびる屋”というのをやっている。具体的に何をしているかというと、説明しづらいが、つまる所なんでも屋にも近いかもしれないな。ご主人の名前は色々あって、正直吾輩もどれがご主人の名前なのか解らないのが現状だ。褐色の肌をしていて、彫が深めで、鼻筋が通っている。唇がやや厚めで、目の色が湖のように青いのが、ご主人の特徴だ。吾輩から見ても中々の“いけめん”ってものかもしれないな。
次に吾輩のご主人のご主人、吾輩が知っていることと言えば、ご主人よりも偉いということ。少なくとも吾輩のご主人は、この方には逆らうことが出来ないようだ。髪の毛が微妙に長く、片目が隠れがちで、ぱっと見ただけでは男なのか女なのか判断が付かない不思議は人物だ。
吾輩が二人の紹介をしている間には既に話は終わってしまったようだ。この二人が話すときは最低限度の単語でぼそりというものだから、吾輩もつい聞き逃してしまう。どうやら吾輩のご主人は新たな任務が与えられたらしい。
吾輩のご主人のご主人が去り際にぼそりと、吾輩に向けて言った。
「これから会う者に青に関する質問をすると、糸が変わる」
手を鋏の形にして、ちょきんと切るような仕草をして、去った。
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