相互さんのツイが元ネタです。
「もう朝か」
伊佐はそういうと背伸びをした。
「朝まで見張ったけど、彼は結局出てこなかったね」
彼ら、二人のサーカムの調査員はある人物を追っている。見張っていたのはとある雑居ビル。彼らが追っている人物がここに来ると情報を掴んで先回りとして待ち伏せていたのだが、どうやら待ちぼうけを食らってしまったようだ。
見張りの拠点として宿泊していたホテルを早めにチェックアウトして出ると、朝日はまだ上りかけの霞んだ空。ホテルの出入り口はちょうど東を背に向けているのが伊佐にとっては好都合だった。
ホテルは駅から比較的近く、駅に向かう道なりにはチェーン店が道なりに開いていた。
「さっき本社に連絡したら今日のところはこのまま帰ってもいいそうだよ」
「それは助かる。このまま仕事しろなんて言われたら意地でも休んでやるって思っていたところだ」
「サボタージュはいけないよ、伊佐。でもそうだね、この労働は伊佐には大変かもしれない」
伊佐はむっと千条を睨んだ。ちょっとだけかちんときたのだ。
「人をおっさんみたいに…」
「人によっては何歳でも年上ならそういう風潮があるって聞いたけど」
「誰に聞い…ああ、いや、いい、忘れてくれ」
徹夜の疲れのせいか千条へのツッコミも失せてしまった。
ぐうと伊佐の腹が鳴った。勿論彼らはまだ朝ご飯を食べていない。
「空腹を感じているのかい?」
「その様だ。折角近くに飲食店もあることだし食べに行くか」
「そうだね、どこにする?」
「そうだな…」
歩きながら店を見ていたが、一店だけ気になる店を見つけた。
「あそこはどうだろう」
伊佐が指を差したのは真新しい外装の有名なチェーン店。どうやらごく最近開店したらしい。
「いいね、行ってみようか」
店に入ると、まだ時刻が早いせいもあって人がちらほらしかいない。
ここは自販機で券を買うタイプの注文システムのようだ。伊佐は千条にやり方を教えつつどれを食べるか決めた。
伊佐は食べながら、疲れが取れそうだと心の中で呟いた。
伊佐がよほど美味しそうに食べていると思ったのか、千条が聞いてきた。
「そんなにおいしいかい?」
「千条も同じものを食べているだろう」
「そうだけど、なんだかおいしそうに食べているように見えてね」
「疲れた後のご褒美みたいだなと思ってな」
食器を返却棚に置いて帰る支度をする。
「さて、帰るか」
「伊佐は帰ったらちゃんと寝てね。体内時計が狂いそうだけど、休息は取らないと疲れが響くよ」
「こういう時はおやすみで合っているのかい?」
「どちらでもいいが、お互い帰ったら寝るだろうしな。というか、俺は帰ったらすぐに寝るだろうが、お前は本当にちゃんと寝ろよ。限界まで起きている実験なんて必要ないんだからな」
二人はそれぞれの帰路に向かって別れる。
伊佐は後ろから「ふあ」と声が聞こえた。
伊佐は振り向いてみると、あくびをした千条が見えた。
PS.徹夜は辛いよね。
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