願うなら

 百貨店の広場に大きな竹が一本立てられている。枝には沢山の短冊が掛けられている。短冊には様々な願いが書かれている。

 見事な竹と、多種多様な願いに興味を引かれて伊佐は竹をしばらく見ていた。

「何を見ているんだい?」

千条が買い物を済ませてやってきた。

「ああ、竹さ。短冊に書かれていた願い事を見ている」

千条も一瞥する。

「書いているのはおよそ十歳未満が68パーセント、十代が19パーセント、2パーセントは二十代から五十代、11パーセントが60代以降。子どもが多いね」

「以外と大人も書いているんだな」

「大人も書いているのは恐らく子供連れだよ。ほら」

千条は短冊を書く机に視線を向ける。

 3歳ほどの子供とその親らしき大人が笑顔で書いている。文字があまり書けない子に教えつつ、自分も書いている。書き終えると一緒に竹に飾ろうとうと竹に近づいた。

「っと」

伊佐はそっと親子から離れて場所を譲り、千条のもとに行く。

「不思議だよな。七夕って元々は逢引の為の日なのに、誰が叶えるんだろうか」

「元々は恋人の話は中国から、祈願は日本で行われていた慣わしだよ。祈願の期間がそこそこ一致していたから、混ざってしまったようだね。そこから、年月を伴ってバレンタインと同じようになんでもありになってしまったんだよ」

「そもそも叶える神様はいないってことか」

「そうだね。願いは自分で叶えないと」

「奴を、ペイパーカットを捕まえるのは特にな」

そうだねと千条は相槌を打って、机に置かれた短冊とペンを持ってきた。

「ところで、書いていかないかい?」

「ペイパーカットを捕まえるとでも書くか?」

「僕らの手で摑まえる為に?」

くすくす笑いながら彼らは願い事を書いた。



参考にしたサイト

https://trendripple.jp/13940.html

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