ジェンガの下の蜘蛛の糸

 彼女はいつものように蝙蝠のようにぶらさがって彼を見つけると、溜め息をついた。しかし、それ以上は話しかけることも、近づくこともしない。彼の行動をさまたげてはいけないと思ったのだ。

 彼はぶらさがっている。何本ものの鉄骨がジェンガのように重なっただけの鉄くずの山の端から伸びた一本に洗濯物のように足が掛かっている。その一本は

「そこの」

男にいきなり話しかけられ、生瀬は思わずびくっと一歩下がりかけるが留まる。

「足元にあるコンクリートの塊があるだろ。そいつをどかしてみろ」

生瀬は息を飲む。生瀬の足元にコンクリートの塊がある。その下にはピンと張ったロープが抑えられている。ロープの先を見ると、鉄くずの山まで伸びて、その先には男がぶらさがっている鉄骨の先端に結ばれている。

 恐らくこのコンクリートをどかせばこの鉄骨の山は一気に崩れ、この男もただではすまされない。どういう仕組みか、この男が少し身を動かしただけでも、この鉄骨は崩れそうなほどこの山はぐらぐらと揺れている。

 生瀬は一歩下がり、溜め息を付く。

「私はこんな所で貴方を殺したいんじゃないです」

「そうか」

揺れる鉄骨を全く気にせずに男は下りる。生瀬は思わず目を背けたが、鉄骨の山は大きく揺れただけで崩れることはなかった。

 睨む生瀬を無視して男は歩いてくる。通り過ぎる瞬間、男は生瀬を見る。

「ちなみにこれは炭素繊維で出来ている。仮にお前がこれを切ろうとしてもとてもじゃないが常人には切れやしない。とてもじゃないが人間を止めない限り、切る事なんて出来やしない代物だ。残念だったな」

 形だけ上げた口角は笑ったのか、それとも筋肉の痙攣による伸縮だったのか、生瀬には解らなかった。

【隈研吾】『デモクラシー建築』の最新作「COEDA HOUSE」 熱海市にオープン  | 建設通信新聞Digital

 相模湾を一望する絶景の地に、大きく伸び広がる木のような建築が誕生した。静岡県熱海市のホテルニューアカオ(赤尾宣長社長)が、同市上多賀のアカオハーブ&ローズガーデン内に建設したカフェ「COEDA HOUSE(コエダハウス)」だ。19日にオープンした。 設計は建築家の隈研吾氏。『人の手』で『小さなモノ』を使って建物をつくるという『デモクラシー建築』の最新作となる、このカフェでは、樹齢800年を超える8cm角のアラスカヒノキの角材を長短織り交ぜながら積み重ねた。一本一本の角材には鉄筋を通し、注入した樹脂で固定する拡張樹脂アンカー工法を採用。木材が積層し大きな幹となってそこから枝が伸びるように屋根を支える、強固な一つの構造体を組成した。 さらに軽量で鉄の7倍の引張り強度を持つ炭素繊維複合材「カボコーマ・ストランドロッド」を12本、木組みを縫うように放射線状に張り巡らせて耐震補強している。 「主役は木の構造体と周囲の景観」と語るのは、現場を担当した隈研吾建築都市設計事務所の小松克仁氏。照明の配線や空調なども家具や床下、構造の木材を巧みに使いながら見えないディテールに留意した。意匠的にも構造的にも繊細な建築は施工に当たった桐山(富士市)の「高い加工精度と木の技術がなければできなかった」(小松氏)という。 ガラスの外装や鏡とガラスでつくられた家具によって周囲の庭園や景色と溶け込む施設は、木造一部S造平屋建て。室内面積81㎡。構造設計は江尻建築構造設計事務所で担当した。 建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら

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最後に読んだのはいつにだったのか思い出せないうろ覚えで書いたのでパンゲアファンに殴られそうである。おっと、ここにちょうど糸が。

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