チクタと化け猫

 チクタはお腹に時計が埋め込まれたハリネズミです。お腹の時計を動かしてもらえるようにするために時計職人を探して、旅をしています。

 あるときチクタは薔薇が沢山咲いている園へ迷い込みました。

「ここはどこだろう?」

見渡せどもあたりは白と赤の薔薇の世界で、いったい自分はいつからここに迷い込んだのかも分からなくなりました。道らしきところをたどると、誰かとぶつかりました。

「あいたたた。ごめんなさい、怪我はない?」

「ああ!急がなきゃ!って、そうじゃない、こちらこそごめんなさい。君こそ怪我はないかい?」

ぶつかった相手はそういって、手を差し伸べました。チクタも相手へ感謝し、立ち上がる。

「……よかった。ぼくはチクタ」

「走っていた僕が悪いさ。怪我がなくて何よりだよ。僕は化け猫さ」

化け猫曰く、ここは近辺に住んでいる者でさえ迷う場所らしく、チクタは化け猫の送りでここを脱出してもらうことになった。

 道すがら、化け猫はチクタを案内しながらチクタに尋ねた。

「君は何故こんなところに?あんな所に迷い込むと出るのが大変だけど、迷い込むまでの条件も難しくってね。探し物があると迷いこんでしまう変な森なのさ。入口さえ覚えて、避けてしまえばなんてことないけどね。けれども、初めて来たのなら迷い込むのも仕方ないね」

チクタは事情を話し、時計職人のことを尋ねた。

「時計職人かぁ……この近くにはいないなぁ。でもきっと見つかるよ。僕は友達を探していてね。きっと見つかる」

 話している間に森の出口についたようです。

「わぁ!化け猫さん、ありがとう!」

「どういたしまして。ほら、これが森の目印だよ」

化け猫は紫の薔薇を差した。一輪しか咲いてないらしく。踏み越えてはいけない目印としては解りやすい。

 化け猫はチクタとここでお別れすることになった。

「お別れにチクタにいいことを教えてあげるよ!」

そういって化け猫は口笛を吹いた。

「これが聞こえたらチクタは逃げるんだよ!じゃあ気を付けてね!良い旅を!」

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