2017.04.16 22:00チクタと化け猫 チクタはお腹に時計が埋め込まれたハリネズミです。お腹の時計を動かしてもらえるようにするために時計職人を探して、旅をしています。 あるときチクタは薔薇が沢山咲いている園へ迷い込みました。「ここはどこだろう?」見渡せどもあたりは白と赤の薔薇の世界で、いったい自分はいつからここに迷い込んだのかも分からなくなりました。道らしきところをたどると、誰かとぶつかりました。「あいたたた。ごめんなさい、怪我はない?」「ああ!急がなきゃ!って、そうじゃない、こちらこそごめんなさい。君こそ怪我はないかい?」ぶつかった相手はそういって、手を差し伸べました。チクタも相手へ感謝し、立ち上がる。「……よかった。ぼくはチクタ」「走っていた僕が悪いさ。怪我がなくて何よりだよ。僕は化け...
2017.04.16 22:00十万馬力 方や、十人程のヤクザ、方や細身の青年。多勢に無勢である。見た目であれば、どうみてもヤクザの方が優勢である。これが、およそ十分前の光景である。「伊佐はなんとか捕まえられたかな?」青年は、飄々とつぶやく。 十分後の現在。ヤクザは一人として起き上がっていない。青年は黙々とヤクザ達を拘束している。身なりこそ少々乱れている物のまったくダメージを負っていないようだ。「早く戻ってきてくれるといいけど」 青年はポケットから通信機器を取り出し、何やら操作しだした。 ヤクザの一人がのそりと起き上がったことに青年は気が付いていない。 青年、サーカムという保険会社の調査員の千条雅人は、ただの人間ではない。以前脳にダメージを負い、特殊なチップを埋め込まれている。先程、どうみて...
2017.04.16 22:00面影 伊佐が非番に変わる時間の時だった。サーカム財団極東支部へ書類を出し、廊下から出る所で何かに躓いた。あの病院ほどでもないが、サーカムに支部もだいぶ他の建物よりもゴミが落ちていない。ましてや躓く程の大きい物が落ちていたなんてないとは思うが、躓いた人間がいるのだ。ゴミなら然るべき所に捨てて欲しいなど心の中で愚痴りながら後ろを振り返った。 一瞬、頭の中が真っ白になった。振り返る途中に細い糸が見えた。糸は掴んでいたらし。壁に隠れて見えなかった。片方は西秋有香がつかんでいて、もう片方は「……何をしているんだお前ら……」「何って悪戯だよ」悪びれずに答えたのはもう片方を掴む千条だった。 事は最近サーカムに入った西秋有香と例の病院に入院している妹の真琴の雑談が発端であ...
2017.04.16 22:00おおげさだ 目が痛い。そう言って伊佐は目を押さえてしゃがみこんだ。「どうしたんだい、伊佐。目にゴミでも入ったのかい?」特に心配そうでもない声音で千条はてきぱきと目の洗浄液を取り出す。 コンタクト装着の者なら見たことのあるペットボトルに似た容器。容器の蓋を覆い被さる形で付属されている洗浄する為のコップ、洗浄液を入れた物と違い、暗い茶色とも黒とも判別の難しい色がついている。市販のでも成分的には伊佐が使用しても問題は無いらしいが、市販のは透明なので、伊佐がコップから見える光に耐えられないのだ。 目の洗浄専用の容器を伊佐に渡すが、必要ないと手で断られた。しかし伊佐の手に無理矢理置いた。「伊佐、分かっているだろうが、君の管理も僕の仕事だよ。失明したらどうするんだ。ペイパー...
2017.04.16 22:00シーマスの本 シーマスは月面を調査するために作られた兎の形をしたロボットである。シーマスを作ったミョウガヤ博士はシーマスに月の調査をさせ、本を作るように言った。シーマスの体内には月の砂で本が作られる機能が備わっている。月の調査が終わったら本を作るのがシーマスの仕事だ。 今日もシーマスは月を歩き回り、地形の違いや石を見つけてはそこから何が起きて今に至るのか考える。月面はクレーターばかりの白い地面ばかりではあるが、シーマスにとっては一つとして同じ場所はない。こつんと足に何かが当たった。足元を見ると、日頃多く見る石ではない。手に取り、詳しく調べる。しかし、シーマスに内臓されているデータベースに該当するデータはない。物質としても不思議なものだが、何より形状が特殊だ。シーマ...
2017.04.14 22:00MPLSにも負けず飴屋(虚空牙)にも負けず舞阪(MPLS)にも負けず表でも裏の任務にも負けぬ(改造された)丈夫な体を持ち 欲はなく(逆らったら消されるので)決して逆らわずいつも静かに任務をこなしている
2017.04.09 14:01もふもふならば仕方ない サーカム財団の関連施設。資料保管場所に伊佐はいた。 部屋は薄いカーテンがかかっている。部屋は薄暗く、資料を読むには見づらいが、伊佐には問題ない。ある事件にかかわった故に目が強い光に耐えられなくなっている故、却ってこの方が目が辛くないのだ。 元々薄暗い部屋にいたせいだろう。気が付けば夕方だった。 カーテンを捲ると、星が見えるほどの暗さになっている。視力が弱く、あまり星は見えないが一等星なら見える。 夕日と星空の間に何か流れ星が見えた気がした。(願い事を三回言うと叶うか…。流れ星が流れる一瞬のうちに思い出せるほどの願いなら叶うから、叶えられるだったか) 願いはなくても執念はあるが、それは一体何時になれば叶うものか。 ドアがノックされ、「入るよ」と声が聞こ...
2017.03.19 22:00姉さん生きろ千条姉へのお題は『月を見る猫・似合わない眼鏡・わざと掛け違えたボタン』です。https://t.co/H3GdJegK97***月を見る猫 窓辺から眺めるのが日課になって何日経ったことか。私は数えることはしないけれども、あの子はきっと何日いるのか数えて、怒るのだろう。 あと何分間すると怒った顔で紅茶のセットを持ってくる。こんなのを飲むと寝付けなくなるだろと言って逸書に飲んでくれるのだから可笑しい子。 弟が来るのにそう時間は掛からない。それまで外に面白いものはないだろうか。 見つけた。 月を見る猫がいた。 またまた上を向いているようにも見えるけれども、私には上を、月を見ているように見えたのだ。 私も月を見たけれども猫が夢中になれるほど今は月に興味が持てな...